2024年1月14日「なぜ」を掘り下げて、納得・共感してもらえる話をしよう
★表面的な話は面白くない
日本話し方センターでは短期間で話し方を改善したいという方のために、2日間集中コースを開催しています。
このコースでは、話し方に関する知識や心構えを講義で伝えた後、かなり多くの時間をかけてスピーチのトレーニングを行います。
『原稿作成→講師のアドバイス→声出し練習→講師のアドバイス→全員の前での発表→講師の講評』
この流れを2日間で3セット行って、話し方のスキルを磨いていきます。
その結果、最初の頃はあがり症で上手く話せなかった人も、最後のスピーチでは堂々とわかりやすい話をされるようになっています。
ところで、このセミナーでスピーチ作成のアドバイスをしていて思うことは、話が苦手な人は『表面的な話』をしていることが多い、ということです。
『表面的な話』と言っても伝わりにくいので、実際にあった例をもとに解説します。
★受講生Tさんの例
受講生のTさんは、セミナー最初のスピーチ演習で、次のような原稿を作りました。
- 奥さんに内緒で株を買った
- ところが証券会社から自宅に郵便で通知が来て、奥さんにバレてしまった
- 奥様に将来絶対に利益が出ることを丁寧に説明したが、全く納得してもらえなかった
- 今も奥様とは気まずい状態が続いている
Tさんはこのスピーチで言いたいこと(主題)を「奥さんへの隠し事はよくない」としました。
いかがでしょうか?
Tさんの原稿は、残念ながら、聞き応えのある話にはなっていません。
聞き応えのある話とは、聞いている人が納得できたり、共感できたりする話です。
では、この原稿には何が足りないのでしょうか。
★聞き手の感情を動かす要素を入れる
それは、この原稿が単なる『事実の報告』だけしかしていないからです。
私たちは人の話に納得したり共感したりする場合、必ず感情が動きます。
従って、話をする際には、聞いている人の感情を動かす要素を入れる必要があります。
Tさんの話にはその要素がないため、つまらない話になっているのです。
では、この話に何を加えると納得・共感できる話になるのでしょうか。
そのキーワードは『なぜ』です。
Tさんのスピーチを例にすると、Tさんが株を買ったことをなぜ奥さんに内緒にしたのか。
これを考えることで、話に深みを加えることができます。
実際に講師がTさんにアドバイスしたことを紹介しながら説明します。
講師「そもそも、どうして奥さんに内緒にしたのですか?」
Tさん「それは・・・絶対反対されると思ったからです」
講師「なるほど。ということは奥様に反対されるようなことがあればまた内緒にするかも知れませんね」
Tさん:「あ~、確かにそうですね・・・」
講師:「Tさんが奥さんに内緒にした原因を考えて、今後同じことをしない対策を加えると、もっと説得力のある話になりますよ」
その後、Tさんは、反対されると思って株を買う前に奥様に説明しなかったことがよくなかった、と改めて反省されました。
そしてスピーチのテーマを「何でもきちんと話し合おう」として、スピーチの最後に次のことを加えました。
- 反対されると思ったから内緒にしたが、その結果とても気まずいことになった
- これからは何事も奥さんに事前に話をして、納得してもらうようにする
★常に『なぜ』を考える
Tさんのように、セミナー参加者が作成するスピーチは、当初は事実をなぞっているだけ、というものが多いです。
こうした話を聞いている人は、
「なぜそんなことをしたんだろう?」
「同じことが起きないために何をするんだろう?」
「相手はどんな気持ちだったんだろう?」
など、様々な疑問を感じてしまいます。
しかし、そこから『なぜ』という言葉でその話題について深掘りしていくと、Tさんの例のように、自分の気持ちや考えを盛り込んだ、聞き手が納得できる話になっていきます。
スピーチに限らずあらゆる場面で大切なことは『なぜ』と自問した上で、行動や思考の目的や理由を話すことです。
これらを考えて分かりやすく話すことで、聞き手は話が良く理解できて共感を持つことができるのです。
上司への報告や会議での発言でもぜひ『なぜ』を意識してください。
★ご自身の話に磨きをかけませんか?
今回ご紹介したように、日本話し方センターの各コースでは、話し方のテクニックはもとより、聞き手が納得できる話の構成も実習を通してご指導しています。
話の内容に自信が持てれば、落ち着いて話ができるようになります。
話し方のスキルを磨きたい、という方はぜひベーシックコース、2日間集中コースにご参加ください!